講演会  
第33回淑瞳会 学術講演会報告


 平成27年6月6日(土)、神戸ポートピアホテル南館B1Fサファイアの間にて、第33回淑瞳会学術講演会を開催しました。
 
司会進行を谷が担当し、始めに淑瞳会委員長の片上千加子先生より御挨拶をいただきました。次に、兵庫県眼科医会男女共同参画部部長の藤原りつ子先生より、活動内容の報告をしていただきました。

 座長を山田裕子先生にお願いし、教育講演として、兵庫医科大学講師、増田明子先生に「立体視と3D」についてわかりやすい解説をしていただきました。

 両眼視機能の発達のピークは1?2歳で、その後視覚情報獲得能力は低下し、7?8歳で臨界期を迎え、その後は視力・両眼視機能は育たないことをグラフで示していただきました。両眼視機能を阻害する斜視のうち、小児に多いものは先天内斜視、調節性内斜視、間欠性外斜視、先天性上斜筋麻痺で、これらの眼位異常により、小児では抑制、網膜対応異常、斜視弱視が起こります。視機能発達後の成人では、眼位異常により複視、眼精疲労が起こります。

 また、3Dについては、間欠性外斜視において近見眼位が30△以上の輻輳不全型で3D認識能力が低い傾向がありますが、斜視手術により3Dの認識が可能になったとの報告をしていただきました。一方、内斜視では、立体視が得られなくても3D映画を普通の小児と同様に楽しめる場合があります。

 次に、特別講演として、理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト副プロジェクトリーダーの万代道子先生に「iPS由来細胞/組織を用いた網膜の再生医療」について最新の研究結果の報告をしていただきました。

 加齢黄斑編成の発症には網膜色素上皮の老化による機能低下が大きく寄与しており、万代先生らのチームは滲出性加齢黄斑変性に対し、自己iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植の臨床研究を開始されました。昨年一例目の手術が行われ、そのビデオ画像を呈示していただきました。黄斑下新生血管がすぽっと抜去され、移植シートが挿入される様子は迫真の緊張感が伝わってきました。術後は安定して0.1の視力を保っておられるとのことです。細胞の準備に時間がかかること、コストの問題など様々な問題に対し、適応の拡大や他家移植への移行、CPCの省略などの対策が考えられつつあります。

 また、5年後の実用化をめざし、網膜色素変性症患者への視細胞移植の研究も始まっています。マウス実験ではES/iPS細胞由来シート移植片を層として生着させ光応答の機能を確認したことが報告されました。

 今後、視機能を再生医療により改善させられても、その後のロービジョンケアは大切で、再生医療はリハビリ(ロービジョンケア)とセットで完成する治療であるという考えを述べていただきました。

 お二人の先生の素晴らしいご講演に、80名を超える参加の先生方より盛大な拍手が送られました
 




教育講演をされる増田明子先生



特別講演をされる万代道子先生
神戸市  谷 恵美子