2011年総会報告

講演会報告

 平成23年9月24日(土)、台風一過の秋晴れのもと、第29回淑瞳会がホテルオークラ神戸にて開かれました。

 今年は、講演会のみの参加者も歓迎し、兵庫県医師会男性会員の方々も多数ご参加くださり、講演会には91名、懇親会に69名集まっていただくことができ、盛会に終わったことを嬉しく思っています。

 講演会では、まず、兵庫医科大学眼科講師の木村亜紀子先生が、「成人斜視の治療〜複視と見た目が問題です〜」とのテーマのもと、実際に経験された症例をもとにわかりやすい話を聴かせてくださいました。麻痺性内斜視の手術を受けた男性患者さんから「鏡を見ることが楽しくなった、外出が楽しくなった」との感謝を綴られた手紙をいただき、斜視手術が複視などの機能の改善のみならず、むしろ容貌の改善において大変感謝されるものであると再認識させられたとのお話が、特に印象に残っています。

 次に、理化学研究所網膜再生医療研究チームチームリーダーの高橋政代先生が、「iPS細胞と網膜色素変性」について、世界の最先端の話を聴かせてくださいました。最外層からアプローチできる色素上皮細胞の再生医療は、より実現に向けて研究が進んでいますが、網膜色素変性に対する視細胞の再生医療には超えなければならないいくつかの壁があります。色素上皮細胞の移植は兵庫県眼科医会60周年記念の場で話していただくことになり、今回はちょっと夢のある視細胞移植の方のお話をしていただきました。

 視細胞移植に際しては、ES/iPS細胞から作った視細胞の純化が最大の課題でしたが、それを解決に導く研究結果が最近理化学研究所の他のグループから発表され、網膜内で綺麗に発色して黄色く輝く視細胞の写真がスライドで提示されました。また、iPS細胞のおかげで網膜色素変性症患者の視細胞研究が初めて可能になり、変異遺伝子のタイプ別に有効な治療法が異なることがわかり、個別医療の道が開けました。

 世界最先端の研究が網膜で進められている、小さな網膜だからこそ再生医療が他の臓器をおいて実現に最も近づいている、という事実は、我々眼科医にとってとてもエキサイティングなことです。高橋先生たち再生医療研究チームの先生方の研究のご発展を心よりお祈りいたします。

谷 恵美子
 
 
会場の様子


ミニレクチャーの様子


特別講演の様子


第29階淑瞳会のご案内(PDF)